天日干し塩(茂串の塩)- 海とともに生き、時間を味に変えるという選択

天日干し塩(茂串の塩)- 海とともに生き、時間を味に変えるという選択

熊本県天草市。

その中でも、観光地として派手に語られることの少ない、小さな集落があります。

名前は「茂串(もぐし)」。


目の前には穏やかな海が広がり、潮の満ち引きとともに人の暮らしが続いてきた場所。

ここで生まれているのが、「天日干し塩(茂串の塩)」です。


この塩は、効率や量産とはまったく違う方向を選び続けてきた塩です。

なぜ、あえて手間のかかる天日干しなのか。

なぜ、この海で塩をつくり続けるのか。


その答えは、土地と人の歩みの中にあります。

 


 

熊本 天草 茂串の海水100% 天日干し塩

塩づくりの前にあった、農業と地域への想い

 


茂串の塩づくりは、最初から「塩を売ろう」と始まったものではありません。


生産者はもともと農業を営み、牛を育てていました。

しかし時代の流れとともに、輸入品の影響を受け、農業経営は厳しさを増していきます。


やがて農業から離れ、土木の施工管理の仕事に就きながらも、

地域のことを考え続け、農業委員として土地や暮らしと向き合い続けてきました。


地域の課題、産業の衰退、若い世代が減っていく現実。

そうしたことを考え、語る中で、ふと投げかけられた言葉があります。


「それだけ思いがあるなら、自分で形にしてみたらどうだ。」


その一言が、茂串の塩づくりの始まりでした。

 


 

 

目の前にある海を、もう一度信じてみる

 


せっかく、これほどきれいな海が目の前にある。

この海の力を、ただ眺めるだけで終わらせていいのだろうか。


漁業だけではない、農業だけでもない。

この海水を活かして、土地に根ざした価値を生み出せないか。


そうしてたどり着いたのが、「塩」でした。


塩は、暮らしの根幹です。

どんな料理にも欠かせず、時代が変わっても必要とされ続けるもの。


だからこそ、ごまかしが効かない

だからこそ、本当に良いものしか残らない


茂串の塩づくりは、ここから始まりました。

 


 

なぜ「天日干し」にこだわるのか

 


現在、多くの塩は釜で煮詰めて作られます。

効率よく、安定して、たくさん作ることができるからです。


一方、茂串の塩は天日干し製法

火を使わず、太陽と風の力だけで海水を蒸発させます。


当然、時間がかかります。

天候にも左右されます。

つくれる量は、ほんのわずか。


それでも天日干しを選ぶ理由は、にあります。


急激に煮詰めないことで、

にがりが過剰に残らず、苦味やえぐみが出にくい。


その結果生まれるのが、

角のない塩味、やさしく広がる旨みです。

 


 

熊本 天草 茂串の海水100% 天日干し塩

「しょっぱい」だけでは終わらない塩

 


茂串の塩を口にした人がよく口にする言葉があります。


「辛いだけじゃない」

「素材の味が前に出る」

「料理が変わる」


この塩は、料理の主役になる塩ではありません。

むしろ、一歩下がって支える塩です。


肉なら肉の旨みを。

魚なら魚の甘みを。

野菜なら野菜の力を。


余計な主張をせず、素材のポテンシャルを引き出す。

それが、天日干し塩ならではの役割です。

 


 

 

大量生産できない理由

 


茂串の塩は、大量に作ることができません。


天候が悪ければ、作業は止まります。

湿度が高ければ、結晶は育ちません。

自然の都合が最優先です。


だからこそ、

「いつでも、いくらでもある塩」ではありません。


自然が許す分だけ、

人が見極めながら、

少量ずつ仕上げていく。


その積み重ねが、

ここにしかない、貴重な幻の塩と呼ばれる理由です。

 


 

 

子どもにも食べさせたいと言われる理由

 


この塩を使った料理を食べて、

「子どもに食べさせたい」と言ってくれる人がいます。


特別な健康食品ではありません。

ただ、余計なことをしていないだけです。


海水100%。

火で無理にいじらない。

自然の流れを尊重する。


その結果、

身体にも、味覚にも、無理のない塩になっています。

 


 

 

茂串の塩が伝えたいこと

 


茂串の塩は、

「効率よく作ること」より

「続けられること」を選びました。


「売れる見せ方」より

「誠実な作り方」を選びました。


土地と向き合い、

海と向き合い、

自分たちの手で判断し続ける。


それは、派手ではありません。

でも、確実に積み上がるやり方です。

 


 

 

最後に

 


この塩は、

特別な日のための塩ではありません。


毎日のごはんに、

いつもの料理に、

何気ない食卓に。


そこで静かに力を発揮する塩です。


天日干し塩(茂串の塩)。

それは、海と人が対話しながら生まれた、

時間を味に変えた塩です。

 

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